2005年8月号(第51巻8号)

スペイン紀行

ブルゴスの大聖堂

ペン+水彩(33.2×23.6cm)

北スペインから山を越えて,南へ内陸部に入ると,殆ど樹木のない平原と麦畑がどこまでも続き,やがてブルゴスの街に着く。

いよいよ,巡礼の道に入って,路傍には古い石造りの十字架の道しるべや,ホタテ貝をかたどった現代の標識が目につくようになった。

巡礼の道とは,遠くフランスからピレネーを越えて,キリスト教三大聖地のひとつ,サンチャゴ・デ・コンポステーラに至るもので,そこにはエルサレムで殉教した聖ヤコブ(サンチャゴ)の亡骸が眠っている。この巡礼は12世紀に始まり,最盛期には年間50万人を超える巡礼者がスペイン国内だけで800kmにもおよぶこの道を辿った。最近,テレビでも放映されたが,今日も,長い杖を手に,シンボルのホタテ貝を身につけて野道を行く巡礼者の姿が見うけられた。

ブルゴスはこの巡礼の道の最大の宿駅で,その大聖堂はスペインの三大ゴシック教会のひとつといわれている。13世紀の初め,フランスのゴシック様式を導入して建設が始められ,15世紀にドイツの建築家によって見事な透かし彫りの双塔などが付け加えられた。その後,さらにスペインの華やかな装飾が融合されて,16世紀にようやく現在の姿になった。これだけ色々の手が加わったとは思えない統一されたゴシック様式で,重量感のある安定した壁体と天にそびえる尖塔がなんとも美しい。

夕陽をあびて,その尖塔が赤く染まり始めた。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ