2005年7月号(第51巻7号)

スペイン紀行

カンタブリアの港町

ペン+水彩(40.6×31.4cm)

カンタブリア海に面して,サン・ビセンテ・デ・ラ・バルケラという長い名前の街がある。スペインには,とても覚えられない舌を噛みそうな地名があるが,これもそのひとつ。絵の題名を単に港町としたのもそのためである。それにひきかえ,カンタブリアという響きはいかにも明るくのびやかで,この地方にふさわしい名前のような気がする。

オビエド県境に近く,いくつもの深い入江がこの美しい水の都を作り出している。丘の上には,ロマネスクとゴシックの混淆の教会があり,城と城壁の旧市街と入江にかかるいくつもの橋が良く調和している。また,湖の満ち引きによって,この街の表情は大きく変わるという。有名な白砂のビーチが明るいカンタブリアの海に白々と映えて美しい。

丘の向こうには,高い山並みが連なっていたが,霧に見え隠れしているので省略した。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ