2005年5月号(第51巻5号)

スペイン紀行

港のレストラン

ペン+水彩(23.5×19.2cm)

スペインの北岸,カンタブリア州の東端にカストロ・ウルディアレスという小さな漁港がある。港のまわりには旧市街があって,ゴシック様式の教会があり,その隣は古い城跡で,今は岬の灯台になっている。明るいカンタブリア海に面した入江に,色とりどりの小さな漁船が舫っていて,海辺にはきれいなレストランやバールが立ち並んでいる。明るい日差しの中,建物と漁港のさまざまな色彩のコントラストが大変好ましい。

時間の限られたツアーの中で,スケッチをしようと思うと,それなりの工夫と努力が要る。絵の左手に見えるレストランで食事を終えるのもそこそこに,デザートも断って,先に外に出る。岩壁のベンチに腰をおろし,一行がデザートを終え,勘定を済ませて出てくる30分くらいの間にスケッチした。

こんな静かな美しい港町に,二,三日,滞在してゆっくりと絵を描いて過ごしたいものである。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ