2004年11月号(第50巻11号)

山のスケッチ

千畳敷カール

鉛筆+水彩(18.0 × 13.9cm)

日本アルプスには有名なカール(圏谷)が数多くあるが,最も手軽に行くことが出来るのは木曽駒,宝剣岳の東に広がる千畳敷カールであろう。麓のしらび平からロープウェイに乗ると,わずか8分足らずで,2,600米のカールに立つことが出来る。便利になっただけ,人が多いのはやむを得ないが,ただハイシーズンには,ロープウェイの待ち時間が2時間以上ということがある。昔は中御所谷に沿って,3時間近くの喘登を強いられたことを考え,贅沢は言わない。広いカールの中を宝剣岳の岩峰を眺めながら一周すると,気持の良い草原,小さな雪渓,そして氷河湖があらわれる。

一面の草もみじをいろどる真紅のナナカマドと這松の緑,そして宝剣岳の岩稜と白いガレを,少し抽象的に色の面を置くような感じで描いてみた。ここから木曽駒山頂までは2時間ばかりで行けるのだが,画材の荷が重いのを良い口実にして,快晴の錦繍のなかで時を過ごした。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ