2004年3月号(第50巻3号)

山のスケッチ

マチャプチャレ

オイルパステル+水彩(13.5 × 12.9cm)

マチャプチャレ(6,993米)はネパール,アンナプルナ山群の鋭峰である。初めてネパールに来てポカラの空港からこの山を望んだ時,「とうとうヒマラヤに来た」という感動をおさえることが出来なかった。現地の言葉でマチャは魚,プチャレは尻尾の意味である。

山は眺める方向によって,全くその形を変える。ポカラから眺めるマチャプチャレは三角形の尖峰であるが,西方のゴラパニあたりから眺めると,その頂上は顕著な双耳峰で,まさしく魚の尾鰭の形に見える。

この山は1957年,イギリス隊によって登頂されたが,地元民との協定を守り,神聖とされる頂上を踏むことなしに,50米を残して下山している。

マチャプチャレの背後の雲が茜色に色づき始めた夕暮,オイルパステルで手早く素描し,淡く水彩で色をのせた。このラフ・スケッチをもとにして,あとで何枚か描いてみたが,気に入ったものは出来ていない。やはりスケッチはその場の臨場感が大切である。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ