2026年4月号(第72巻4号)

鳥棲む空にて

キビタキ

撮影地:長野市(長野県)

 キビタキは、春先になると東南アジアから渡来する夏鳥で、黄色と黒の鮮やかなコントラストが印象的な鳥です。
 キビタキとしばしば比較されるのが、同じく夏鳥の代表格であるオオルリです。青を基調としたその姿は、こちらもまた非常に美しい鳥です。
 キビタキは「東男(あずまおとこ)」、オオルリは「京女(きょうおんな)」に例えられますが、両者に共通するのは、その美しい声です。春の森では彼らの囀りがあたりに響き渡り、野鳥散策の時間をいっそう心地よいものにしてくれます。
 しかし、その美しい容姿と美声ゆえに、キビタキもオオルリも密猟の標的となっています。わが国では野鳥の愛玩飼養は法律で厳しく規制されていますが、現在もなお違法な捕獲や取引は後を絶たず、鳴き声の良い個体が高額で売買され、組織犯罪の資金源となるケースもあると指摘されています。
 キビタキもオオルリも、初夏に営巣します。この時期、雄と雌が交代で餌を運ぶ姿は本当に微笑ましいものです。ところが、雛が大きくなった頃、密猟によって巣の中が突然空っぽになっていた――そんな場面に、これまで何度も出会ってきました。
 密猟という犯罪そのものへの怒りは言うまでもありません。しかし同時に、私たちバーダー自身も、知らず知らずのうちにそれに加担しているのではないか、と感じるようになりました。巣が見つかれば、多くのバーダーやカメラマンが集まります。結果として、密猟者は苦労することなく巣の所在を知ることができてしまうからです。このことに気付いてから、巣にはカメラを向けないようにしています。バードウオッチングのみならず、どんな場面でも、傍らでならず者が隙を窺っているように思います。彼らに利用されぬように、森に入る者として、そして自然を愛でる者として、どう振る舞うべきか。キビタキやオオルリの姿を見かけるこの時期になると、そんなことをつい考えさせられてしまいます。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人工血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。