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2024年7月号(第70巻7号)
こちらはヤマセミです。警戒心の強い鳥で、撮影には準備とかなりの忍耐が必要です。暗いうちにその生息地(大抵は川の上流部)に入り、気づかれないように観察用テントを張って待ち伏せします。運が良ければ近くにとまってくれますが、運が悪いと丸一日テントの中でくたびれもうけです。
しかし15 年ほど前は、支障なくヤマセミ撮影ができる場所が相模川にありました。それが相模川で最も古い橋梁と言われている小倉橋の河川敷でした。理由はわかりませんが、この辺りのヤマセミは対岸に人間がいても平気で飛び回っていました。
わざわざ東京や埼玉から足を運んでくるバーダー(=バードウォッチャー)も大勢いて、最盛期には河川敷に100 人近くがずらっと並びました。当時、私はまだ野鳥撮影初心者で、ご一緒させていただいた先輩方から多くのアドバイスをいただけました。おかげで撮影の経験値も少しは上がったように思います。
ところが2012 年ごろから、ヤマセミはぱったりと姿を見せなくなりました。当時、圏央道の工事が進行中で、小倉橋の周囲では著しい環境変化が生じていました。ヤマセミはこれを嫌ったのだと思います。
圏央道が開通し、周辺住民は国道16 号や横浜町田インターの喧騒を避けて東名や関越にアクセスできるようになりました。相模原在住の私も間違いなく圏央道の恩恵を受けている一人です。しかし、破壊された自然環境を思うと複雑な気持ちになります。
今も相模川の河岸ではあちらこちらで工事が行われています。物流拠点の整備であったり、エスカレートする自然災害への対応であったりもするのでしょうが、いつまで続くのでしょうか?自然との折り合いがつく日が来るのでしょうか?やり切れない思いにさせられます。
<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー
<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。
写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。
撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。