2024年6月号(第70巻6号)

鳥棲む空にて

オオアカゲラ

撮影地:長野県

 これは営巣中のオオアカゲラです。掲載用の写真を探していたところ、戸隠森林公園で撮影したこの写真に目が留まりました。そして、この時の撮影にご一緒させていただいたA さんのことが、ふと思い出されました。
 A さんは、研究仲間であり、写真仲間でもありましたが、3 年前に亡くなってしまいました。豪放磊落(ごうほうらいらく)を絵に描いたような人柄でしたが、一流のエンジニアであり、ウインタースポーツの国体選手でもあり、カメラマンとしても被写体の瞬間を切り取る神業の持ち主でした。 戸隠は、キビタキ、ミソサザイ、クロツグミ、オオルリ、コルリ、フクロウ、アカショウビンなど、80 種類以上の野鳥が集まる野鳥の聖地として有名な場所です。この時期になると私たちは申し合わせたように戸隠に集い、様々な野鳥を撮影してきました。忘れることのできない思い出がいっぱいありますが、彼が亡くなった後は足が遠のいていました。
 久々に彼のSNS を覗いてみました。亡くなって3 年経つのにも関わらず、SNS には彼を悼むコメントが未だに数多く寄せられていました。職場の同僚、ウインタースポーツの仲間、カメラ仲間、様々な関係の方々の彼への思いを目にするうちに、これだけ愛された人がなぜこんなに早く旅立たねばならなかったのか、改めて悔しさを感じました。同時に、故人に心を寄せ続ける仲間の優しさや絆の尊さに目頭が熱くなりました。 戸隠は霊場としても有名です。そろそろ彼に会いに足を運んでみようと思います。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。