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2024年5月号(第70巻5号)
こちらはフクロウの雛です。鄙びた神社の境内の樹にちょこんととまっていました。フクロウは一般的には森の樹の洞(うろ)に巣を作りますが、古い神社には巣作りにちょうど良い洞が残っているので、春先になるとあちこちの神社でも営巣します。ところが最近、バードウォッチングがブームとなり、しかもSNSで情報が簡単に拡散してしまうため、そうした神社にはバードウォッチャーが詰めかけるようになりました。
この時も狭い神社の境内に多くのバードウォッチャーが集まっていました。彼らの視線を一身に集め、容赦ないシャッター音に晒され、産まれたての雛には相当なストレスになっているだろうと、こちらもその一人ながら心配になりました。しかし当の雛は怯えた様子もなく、時々あくびをしたりしてリラックスしているようにも見えました。また、親鳥の方は別の木の梢にとまっており、こちらも人間たちにはまったくの無関心の様子で目を閉じ、爆睡しているようでした。
全く呑気なものだと思いましたが、よく考えてみればこれだけの人間が集まっているところにカラスやタカなどのフクロウの天敵が襲撃してくることはなさそうです。それに親鳥は夜になると育ち盛りの雛のため頻繁に餌を捕まえなくてはなりません。明るいうちは夜のために身体を休めたいところです。
鳥の脳は、人間や他の哺乳類とは異なるプロセスで、相当な進化を遂げたと聞いたことがあります。もしかするとその高い知能を駆使し、我々バードウォッチャーを雛の守り役として利用しているのかもしれません。
フクロウは森の哲学者とも呼ばれています。恐らく時勢を達観し、利用できるものなら何でも利用し、粛々と生き残り戦略を実践しているのでしょう。
<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー
<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。
写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。
撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。