2023年1月号(第69巻1号)

日本の四季彩巡り(1)

真冬の湖の神秘

撮影地:
北海道
上士幌町
糠平湖アイスバブル

 帯広空港から車で1 時間半、人造湖である糠平湖(ぬかびらこ)がある。この場所にはかつての国鉄士幌線で使われていたコンクリート造りのアーチ橋であるタウシュベツ川橋梁が残されていて、古い北海道の開拓の歴史を伝える近代産業の遺構としてその姿を見せている。冬の糠平湖では湖の完全結氷と積雪が少ないという条件が揃うと、アイスバブルという神秘的な光景が見られる。アイスバブルは湖底から発生したメタンガスなどの気泡が氷の中に閉じ込められたもので、氷が成長するとともに、アイスバブルも層をなして成長する。積雪の少ない湖面の氷の部分を刷毛で払うと、今まで経験したことのないアイスバブルが現れた。日本では阿寒湖や赤城山の大沼でも見られるが、糠平湖のは範囲が広い。1 月も中旬を過ぎると積雪で物理的に見られなくなり、冬の極寒の初期の光景として貴重である。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。