通巻800号記念特集号 2022年7月号(第68巻7号)

日本の四季彩巡り(7)

真夏の静寂なる海のグラデーション

撮影地:
沖縄県
石垣島
平久保

 初めて石垣島を訪れたのは45 年ほど前、大学の医局員になって離島医療への応援に来たときである。当時、県立八重山病院は木造平屋で、虫除けに萱が各病室に置かれ、さながら野戦病院の状態であった。当時より石垣島の景勝地として有名な川平湾のエメラルドグリーンの美しい海はナンバーワンで、今でも多くの人がここを訪れる。しかしこれに勝るとも劣らない光景が、石垣島の北、平久保近くにある。地元の人しか来ない秘密の海岸である。海岸におりる場所は草で覆われ、外からは入り口がわからない。誰も居ない海岸におりると、岸壁の黒色、生き生きした緑の樹木、そして透き通ったグラデーションのかかった海、夏の入道雲が目にしみる。ここは守られた静寂の中、素晴らしい風景を独り占めして、満足感に浸ることができる最高の舞台である。この日は、朝9 時から干潮時にかけて3 時間撮影し続けた。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。