2021年9月号(第67巻9号)

日本の四季彩巡り(9)

可憐なる曼珠沙華(まんじゅしゃげ)

撮影地:
埼玉県
日高市
曼珠沙華(彼岸花)

 埼玉県 日高市、巾着田には、9 月中~下旬、彼岸の時期になると、500 万本の彼岸花が咲き誇る曼珠沙華の里がある。日本一の群生をなす彼岸花が真っ赤な絨毯となって辺り一面を敷き詰める姿に感動する。その景色を今年も期待していたが、昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開花前に刈り込むとのこと。残念ながら今年も観賞することはできない。そこで、数年前に撮影したものを紹介したい。
 彼岸花の一輪をじっくり見ると花弁が規則正しいが複雑で、グロテスクにも感じられる。
また、雑木林の中を紅一色の帯をなして咲き誇る姿には何か勢いのある魂を感じる。一方、古い木の苔の生えた幹から伸びる、6 輪の彼岸花の可憐な姿には心が和む。9 月中旬になると日本のいたるところで彼岸花が咲く。東海道本線の車窓から見える小田原から熱海の沿線で、また自宅の近くの犬の散歩道の脇にも意外にも何輪か咲いている。彼岸花は毎年、9 月中旬という時を知らせてくれる花である。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。