2017年3月号(第63巻3号)

〇毎年のこととはいえ、暖められたり冷やされたり、いま時分の天気は落ち着かない。桜の花は白い部分が見え始めればもうすぐ開花の目印だそうだが、ひと枝に数えるほどの花を咲かせたきり、ぶり返す寒さに花も蕾も身をすくませて、寒さにじっと耐えている。春まだ浅い頃、私たちが様子を確かめるために何度となくの桜の枝を見やるのも、もうすでにお花見の一部、長い時間お花見を楽しませてくれるこの時期の気まぐれな天気にも、少しだけ感謝したい。
〇 2月14日のバレンタインデーのひと月後3月14日には、マシュマロ、キャンディー、チョコレート、花束など、様々なお返しの品を贈るのがここ近年の決まりごとである。いつもは慌しく夕食の食材や惣菜を買い求める女性でにぎわうデパ地下も、このイベントの目前ともなれば、ビジネスバッグを下げた紳士が大勢現れ、スウィーツを売る店の前に行列を作っているのが微笑ましく目に映る。
お返しのひとつキャンディーは、砂糖やシロップを煮て香料やクリーム、バター、果汁などで味付けをしたものである。キャラメルなどのソフトタイプとドロップなどハードタイプがあり、さっきは分けて書いたマシュマロ、またキャラメルやナッツが入ったチョコレートもソフトキャンディーの中に含まれる。
一方、日本の飴はわが国に古くからある伝統菓子で、「あめ」は「甘い」を語源とする名前である。古文書には「阿米」と書き記されており、「米」の文字からもわかるように、当時は米を原料とし、米もやしにして、発芽によって活性化された酵素によりでんぷんを糖化して水飴を作っていたと考えられている。古くは甘いものは貴重で、水飴は調味料や栄養をとるための貴重な食料として珍重されていたそうである。
「飴」を辞書でひいてみると、解説のひとつに「(小さい)あまい固まり」とあった。恐らく、考え抜いたあとに辿り着いたこういうシンプルな説明も、個人の感性に任せた想像が広がってとても面白いなと思った。

(大森圭子)