2014年1月号(第60巻1号)

〇明けましておめでとうございます。皆様おだやかな良き新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
本誌もおかげをもちまして、めでたく発刊から今年で60年を迎えることができました。また、3月号では通巻700号を数えます。これもひとえに皆様のご支援のたまものと心より感謝申し上げます。
ここを節目といたしまして、初代の編集委員の先生から受け継がれている、貴重な情報の提供を通じて人々の健康に寄与したいという熱い思いを胸に頑張っていきたいと思っております。温故知新と申しますが、守るべきものと変わりゆくもの、それぞれの尊い重みを感じながら新たな時を重ねていくことができれば幸せと存じます。
本年も本誌へのご支援のほどお願い申し上げます。
〇年末年始のお休みはいつも、大掃除、年賀状書き、年末年始のご馳走の用意、お祝いの宴席等々で慌ただしく過ぎていく。例年より長い休暇にもかかわらず、今年の正月もそうこうしている内に過ぎ去ってしまい、気がつけば普段どおりの毎日に身をおいている。
「枯木に鴉(からす)が、お正月もすみました」
これは、放浪の俳人 種田山頭火が詠んだ句の一つ。年末年始の非日常な時間は、まるで短い夢、あるいは魔法のようでもある。
〇1月は睦まじく皆で集う月という意味で睦月(むつき)ともいわれる。英語ではJanuary、フランス語ではjanvier、ドイツ語でJanuarである。これらは全て、門戸の神であるJanus(ヤヌス、ヤーヌス、イアヌスなど)を語源とするものである。古代ローマではヤヌスは大神であり、神々のなかでも最古、最貴、最高と信じられていた。これにより祈祷の際には真っ先にヤヌスの名があげられたことから、いつしか一年の始まりである1月の守護神とされた。ヤヌスは前後2つの顔をもち<門>にあって、時の後先、全ての事柄の終わりと始まりを見守っており、ヤヌスによって一年の安泰がもたらされると信じられていた。古代ローマの貨幣の上にも、静かな眼差しを湛えた彫りの深いヤヌスの2つの顔が左右を向く格好で刻まれている。
〇一方、日本において一年の安泰を叶える役目を果たしてくださるのが年神(としがみ)様である。古語では、年神の「とし」とは米穀のことを指したといい、かつては、農村生活の切実な願いである豊作の守護神として年神様をお迎えすることが正月行事の主たる目的であった。
年神様のことを「としじいさん」と呼ぶ地域もある。小正月に正月飾りを持ち寄って焼く「どんど焼き」の白い煙の中に白髪の老人が姿を現し、煙とともに消えていったという古い言い伝えもあったようだ。
年神様が白髪の老人とされたのは、家の守護神である先祖の霊と重ね合わせられたことが理由とされている。大きな神社にお参りに行ったり、正月を楽しむことに走りがちな自分を反省しつつ、「一人で大きくなったような顔をして」と先祖を寂しがらせぬよう、まずは自分の先祖に感謝する気持ちを大切に、と肝に銘じた。

(大森圭子)