2010年2月号(第56巻2号)

〇一年365日、わが国の日々は、歴史に残る出来事、祝祭日、年中行事、あるいは数字の語呂合わせなどから広義には毎日が何かしらの記念日で埋められている。またそれに伴い、何らかの出来事や存在を忘れないため、また再認識を促すよう、さらには楽しく参加できるようなさまざまな式典やキャンペーンなどの活動が行われる。
〇2月の代表的な記念日では、日本とロシアとの間で日露和親条約が締結された7日が、国民の北方領土への理解を更に深める意図で「北方領土の日」と決められている。年中行事の代表的なものでは2月3日の「節分」、祝祭日では2月11日の「建国記念日」がある。一方、変わったところでは2月28日の「バカヤローの日」。一体なぜこんな名前が付けられているのか不思議に思い調べたところ、昭和28年のこの日に行われた衆議院予算委員会で、当事の首相吉田茂が議員との質疑応答の中で「バカヤロー」とつぶやき、その声をマイクが拾ってしまったことから後に衆院が解散したきっかけの日であるそうだ。記念日というより、「発言には気をつけよ」という教訓かなと思いきや、その後吉田茂が「これからもちょいちょい失言するかもしれないので、よろしく」と発言したという余話もあり、この記念日をどのように受け止めれば良いのかちょっと複雑にさせる。
〇2月の年中行事で気軽に参加できるものに14日のバレンタインデーがある。この日が近づくと街のあちこちにチョコレート売り場が仮設され連日の人だかり。私の周囲では最近、男性に送る目的より自分へのご褒美として普段では手に入りにくい輸入チョコレートを購入する女性が多い。チョコ好きの男性は買いたくても女性ばかりの人だかりでは一寸手が出しづらいとか、気の毒なことである。
一方、ひと月後のホワイトデー近くになると、日頃見慣れない仕事帰りの男性がチョコレート売り場にぞろぞろと出没し、遠巻きに物色している光景が観られる。これに気づき、あたたかく見守るのも私の中では年中行事の1つになっている。記念日とは、ともすればマンネリな生活に流れがちな日々のスパイスのようなものである。

(大森圭子)