2021年7月号(第67巻7号)

〇梅雨明けをした途端、灼けるような暑さが続いている。雨のカーテンのすぐ向こうに、こんなにも強い日差しの真夏が待ち受けていたことに驚かされ、アスファルトをみるみる黒く塗りつぶしていく突然の雨が恋しくすら感じられる。夜になり、どんよりと滞った暑さのなかに、消しゴムで消しかけたような月が空にぼんやりと浮かび、お月さますらこの暑さにぐったりして見えるこの頃である。
〇7 月23 日の晩に、国立競技場で東京五輪の開会式が行われた。視聴率の調査を行うビデオリサーチ社によれば、NHK 総合で放送された開会式の関東地区での平均世帯視聴率(テレビ所有世帯のうち視聴していた世帯の割合)は56.4%、個人視聴率(テレビ所有世帯内の4 歳以上の個人が視聴していた割合)では40.0%、関西と名古屋での平均世帯視聴率は49.6%という数字を記録したとのことである。関東地区では、過去の五輪開会式のなかで、1964 年の東京大会の61.2%に次ぐ高さとなったそうだ。
 開会式の入場行進では、200 を超える国・地域と難民選手団の選手達がとりどりの衣装に包まれて楽しそうに入場、206 番目と最後に登場する日本選手団の入場までがとても待ち遠しかった。競技場をぐるりと囲むように打ち上げられた華やかな花火や、1800 台を超えるドローンで上空に浮かび上がらせた幻想的な光の市松模様や地球など、さまざまなアトラクションは見ている私たちの心を会場へといざない、十分に楽しませてくれた。東京では緊急事態宣言が発令されているが、国立競技場周辺にはたくさんの人が集まっていたそうで、気持ちの上では大いに理解できるものの、大変困った行為である。この大会では、史上最多の33 競技339 種目が行われる。しかも日本での開催とあって、寝不足にならずに見られる恩恵がある半面、色々な種目を見ようと思うと長時間テレビの前に釘付けになる。「東京都オリンピック・パラリンピック準備局」のサイトでは「お家で見よう!東京2020 オリンピック!」と銘打って、競技の放送日程を案内していた。オリンピック競技が始まって間もなくの休日、ひっきりなしに競技が行われているせいか、近所のスーパーはこれまでに見たこともないほど
ガラガラ。みんなお家にいるのかな、と少し安堵した。

(大森圭子)