2015年10月号(第61巻10号)

ハチ退治と自然災害への備え

東海大学医学部 基盤診療学系臨床検査学 教授
宮地 勇人

ハチの活動は夏から秋にかけて盛んになる。庭で突然、頭にチクッと刺された。痛みをこらえ、見上げると軒下に5センチほどの小さな巣がある。アシナガバチであった。退治法を調べると、市に駆除依頼できるのは凶暴なスズメバチのみとある。駆除業者もあるとのこと。自ら駆除することもできる。ハチ用の殺虫剤が有効とのこと。しかし、殺虫剤の散布で近づけば攻撃される。2度目は痛みだけでなく、アナフィラキシーショックで命取りさえありうる。
ハチは意外にも視力が悪く、黒くて動くものは天敵のクマと見なして攻撃する。小生は、頭髪に恵まれてないが、ハチからすると、十分黒いらしい。攻撃対象として認められたのは、喜んで良いものか?黒い瞳も危ない。ハチの弱点は低温と雨で、活動が鈍くなる。そこで退治法として、水攻めを試みることにした。雨の日を待った。白い傘を盾に、黒い(?)頭は白い帽子で隠し、瞳はメガネで保護した。巣から距離をおいて、ホースで勢い良く放水し、一気に巣を落とすことに成功した。安心して庭を歩けるようになった。
ある真夏の朝、玄関の扉を開けると、‘ブーン’とスズメバチが飛んできた。そんな朝が続き不吉な予感がした。注意して周囲を観察すると、驚愕で身震いした。なんと、あの凶暴なスズメバチの巣がある。玄関ポーチに置いていた自転車のスポークに見つかった。人の出入り口のため、緊急で駆除が必要である。市や業者に依頼する悠長な時間はない。水攻め退治法を再現することにした。その日は好天で、雨が降る気配はない。頑強なスズメバチは、水攻めの効果は不明で反撃の恐れもある。殺虫剤も準備し、決死の覚悟で恐る恐る水攻めを行った。何とか巣は落とした。頑強なスズメバチは力強く動き、今にも反撃の気配であった。必死に水攻めを続け、動きが鈍くなった瞬間、意を決して近づき殺虫剤にて止めをさした。
アシナガバチで練習したお陰で、緊急時にスズメバチの大物を退治できた。ハチの生態を調べて水退治法を考案し、有効性を確認した地道な準備が実を結んだ。緊急事態への対応には、日頃の訓練が必要である。備えは自らを守る大きな力になる。ハチ被害も自然災害の1つである。いつ災害が起こるか判らない危険性が身近にある。地震、台風など大災害への備えにも訓練の大切さを改めて思う。