2010年4月号(第56巻4号)

最近の楽しみ

大学評価・学位授与機構 教授 中原 一彦

最近一寸はまっているものがある。「ウィーン・フィル魅惑の名曲」と題する、小学館から2週間ごとに出版されるCDマガジンである。著名な指揮者の指揮による、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏のCDが毎号添付されている。雑誌の中には、ウィーン・フィルをめぐる音楽エッセイや、その号に特集されている作曲家の紹介やエピソード、その曲にまつわる話などが、きわめて読みやすいタッチで書かれている。記念すべき第1号は、ドヴォルザークの交響曲第9番ホ短調作品95《新世界より》で、指揮は何とわれらが誇る小澤征爾である。書店で小澤のアップされた顔写真の表紙が目に飛び込んできたのが、今回小生が興味をもつそもそものきっかけであった。今まで4号まで発行され、ドヴォルザークの他に、チャイコフスキー、モーツアルト、ベートーヴェン、指揮者としては小澤の他に、ヘルベルト・フォン・カラヤン、カール・ベーム、レナード・バーンスタインなど、超一流である。値段も1,190円(1号のみ特別価格で690円)と手頃で、これから50号まで発行される予定である。2週間に1回の発行なので、最後の出版まで2年かかることになる。ドヴォルザークが大の鉄道マニアであったこと、ベートーヴェンがナポレオンのために作曲した交響曲「英雄」は結局ナポレオンには献呈されなかったこと、モーツアルトの曲についているK(ケッヘル)は、オーストリアの音楽研究家ケッヘルが膨大なモーツアルトの作品を年代順に収集・整理してつけられた通し番号であることなど、まさに18世紀のクラシックの世界が目の前に生き生きと展開する。
私がまだ小学生のころ、やはり小学館発行の「小学〇年生」といった月刊雑誌があった。小学三年生のときは「小学三年生」を、四年生になると「小学四年生」を買ってもらうのである。毎月発刊が待ち遠しくて、発売日になると勇んで本屋さんに行って購入したものである。いそいそと自転車の荷台にくくりつけて帰宅し、何度も何度も繰り返し読んだのを思い出す。今回のCDマガジンは、当時のワクワクとした気持ちを思い出させてくれ、その頃の懐かしい記憶とだぶって私の中に甦る。定期購読の申し込みもあるが、私は敢えてそれをしない。マガジンの発売を待って、今日もいそいそと本屋さんに向かうのが楽しみだからである。