2006年6月号(第52巻6号)

日本人のY染色体

聖母大学 看護学部 村上 純子

男性であることを規定するY染色体を、レスター大学のジョブリングは「非行少年」にたとえている。すなわち、たいした働きもせず、不必要なところばかりが多い染色体であるという。

たしかに、Y染色体は5×107塩基対程度のDNAを含むにもかかわらず、遺伝子は27個しかない(普通、この規模なら数百個はある)。しかし、Y染色体には多くのDNA多型が存在するうえに、必ず男性の系統を受け継がれていくことから、男性の世界的な系統図を作成するのに非常に役立った。

その結果、日本人男性のY染色体は、四種類に大別され、うち二種類は縄文系、他の二種類は弥生系であることが判明した。両者ともに大陸からの移住組である。

中堀(徳島大学)によると、Y染色体からみる限り、日本の男性は大陸の落ちこぼれらしい。すなわち、大陸から押し出される形で到来した一度目の落ちこぼれである縄文人と、二度目の落ちこぼれである弥生人が、後は太平洋に落ちるしかないところで、お互いを滅ぼしてしまうことなく、まさに窓際族同士、仲良く自然を享受しながら生きてきたのが日本の男性なのだそうだ。ちなみに、日本人に伝わったタイプは、大陸ではほぼ消滅してしまった(滅ぼされてしまった)そうである。

そして、中堀は次のように続けている。「‥‥大陸の男性や、アメリカの男性たちは、他の民族との抗争に明け暮れ、相手に隙があればいくらでも収奪するし、征服する。‥‥ その根性と意志の強さは私たち日本人男性の太刀打ちできるところではない。‥‥ いたずらに迎合したり挑発したりせず、強者は敬して遠ざけるのが日本の正しい行き方である。同じ土俵で相撲をとる必要はない。おとなしく、できるだけのことをやればよい。‥‥ これが窓際族としての日本人の取るべき立場だと思う。」

巷では、憲法改正論議がメディアを賑わせている。

憲法改正論者は、テロや敵対的な隣国に備えて自衛軍が必要という点を強調するが‥‥ 日本人は、どうやらもともと戦い向きではないらしい。

憲法改正の是非を生物学的特性から考えるのは、ナンセンスかな?