2006年6月号(第52巻6号)

心に残る、山と花

尾瀬・至仏山

夏がくれば思い出す、の歌「夏の思い出」でも紹介されている尾瀬、尾瀬には燧ヶ岳(2,346m)と至仏山(2,228m)が向かい合って聳えています。尾瀬ヶ原から眺める至仏山は、なだらかな女性的な山のように見えますが、蛇紋岩の巨石に覆われた険しい山です。この特異な環境のために、至仏山には多くの固有種が生育し、花の百名山にも選ばれているくらい、非常にバラエティーに富んだ花を見ることが出来ます。雪解けとともに真っ先に顔を出すのは水芭蕉で、白い花が終わると、芭蕉のような葉を出す事から、水芭蕉と言われます。水芭蕉はサトイモ科の植物で、白い部分が苞で、花は中心の黄色い棒状のものです。同じ頃にヒメシャクナゲ、タテヤマリンドウ、オオバノタチツボスミレ、リュウキンカなどが咲きます。特にリュウキンカは黄色のジュウタンを敷き詰めたようになり見事です。

5月中旬から6月上旬には尾瀬沼や尾瀬ヶ原の湿原“夢見て咲いている水のほとり”に咲く花を見に大勢の観光客が訪れます。私も山には登らずにミズバショウだけを見に尾瀬ヶ原を訪れたこともあります。至仏山には残雪の頃に2回、5月連休の春スキーで1回、7月は固有種のホソバヒナウスユキソウを撮りに1回と計4回登っています。特に、春スキーでは、重いスキーをかついでようやく頂上にたどりつき、雪で冷やしたビールで乾杯をして、やれやれと眺めた尾瀬ヶ原はいやはや最高でした。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数