2007年12月号(第53巻12号)

ヒマラヤの詩―山と花に魅せられて

ヒマール・チュリ(7,893m)

ヒマール・チュリはマナスルの南南東14km、マナスル三山の最も南に位置します。トレッキングを出発して第1日目に標高3,200mランタンゴンパに着く。ここは尼寺で、尼さんが3、4人住んでいます。私たちは尼寺の中庭をお借りしてテントを張り、山の撮影に最も良い状態になるのを待機します。

そこからの山の展望は素晴らしく、東にガネッシュヒマール、西にヒマール・チュリが聳えています。ヒマール・チュリの右の方にはマナスルがあるはずですが、ここからは見えません。ここから2時間登ったところからはマナスルが見えるとのことで、帰りに行く予定にしていましたが、夜から雪になり、結局はマナスルの写真は撮れませんでした。

マナスル(8,163m)は日本人によって登られた最初の8,000m峰です。マナスルという山名は、インド測量局によるネパール測量で作られた地図に初めて表示された名前であり、サンスクリット語で「マナ」または「マナサ」は「霊魂、心」を意味し、「ルン」は「国、土地」を意味するそうです。2006年はマナスル登頂50周年で、いくつかの記念イベントが行われました。

翌早朝、まず朝日に輝くヒマール・チュリを待ちます。写真家のF氏に露出についてのアドバイスを受けながら、シャッターを押します。じっとしているので身体が冷えてきます。スタッフがティーを入れて持ってきてくれました。細かいところまで気遣ってくれて本当に有り難いです。1時間くらい撮影をして、フラットな光線になったので、朝食にします。朝食をしている間に今度はガネッシュI峰が明るくなってきました。F氏は30年前にここで赤く輝くI峰を撮られたとのこと。期待しましたがその様にはなりませんでした。

そこでもう1日頑張り、帰りにも2日間滞在しましたが状況は変わらず、写真は一期一会、同じ写真は撮れないのだとつくづくと感じました。時々尼さんが唱えるお経が聞こえてきます。滞在中には私たちとも身振り、手振りで話をするようになりすっかり仲良しになりました。帰りがけに皆で幾ばくかのお布施をして別れを告げました。

(撮影:2004 . 11 ネパール、ガネッシュ・ヒマール)

参考文献
・薬師義美、雁部貞夫編/写真・藤田弘基「ヒマラヤ名峰辞典」(平凡社)
・吉田外司夫著「ヒマラヤ植物大辞典」(山と渓谷社)

昨年は「日本の山と花」、そして今年度は「ヒマラヤの山と花」と2年間に亘り、お付き合いいただき有り難うございました。

写真とエッセイ 後藤 はるみ

1938年 東京に生まれる
1963年 東京理科大学理学部卒業後、代々木病院検査室勤務を経て東京保健会・病体生理研究所、研究開発室勤務
1978年 東京四谷の現代写真研究所に第3期生として、基礎科、本科1、本科2、専攻科、研究科で7年間写真を学ぶ。
1984年 写真家・竹内敏信氏に師事、現在に至る
1999年 病体生理研究所定年退職

・日本山岳会所属 ・エーデルワイスクラブ会員
・全日本山岳写真協会 会員
・写真展「視点」に3回入選
・全日本山岳写真協会主催の写真展に毎年出品
・その他、ドイフォトプラザ等でグループ展多数