2005年4月号(第51巻4号)

スペイン紀行

バスクの農村

ペン+水彩(33.2×23.5cm)

スペインといえば,誰もがアンダルシア地方に代表される明るい太陽と,まばゆい青空,そして白い家並みの風景を思いうかべる。

一方,北スペインには,これらの風景とは全く異なるスペインのもうひとつの顔がある。この地方は大西洋のメキシコ湾流の影響で,冬暖かく,夏は涼しい。乾期がなく,夏でも雨が降るので緑濃い潤いのある風景が展開する。

最も東側のバスク地方は北のカンタブリア海とピレネー山脈に挟まれ,たおやかな緑の牧草地と,切り立った海岸,そしてブナや樫の木が繁る山々が美しい。

バスクはまた,スペインの中でも独自の文化と言語を持ち,道で目にする道路標識もスペイン語とバスク語の両方で書かれている。

独立運動の動きが今も盛んで,ときおり,過激派によるテロが行われているというが,広々とした田園風景は平和そのものにしか見えない。

雨が多いと聞かされてきたが,幸い,よく晴れた日で,緑の谷間に点在する赤い屋根の農家と,丘の上を行き交う雲の色が美しい。

スケッチとエッセイ 武田 幹男

昭和7年生まれ
薬学博士元・田辺製薬株式会社 有機化学研究所長 常務取締役
※絵の略歴 定年退職後、 水彩スケッチを始める
山と渓谷社「山のスケッチコンテスト」準特選入賞
2002年、個展を開催 楽風会 所属
※山の略歴 元・関西山岳会会員
現在はネパール・ヒマラヤのトレッキングなどを楽しむ