2021年7月号(第67巻7号)

日本の四季彩巡り(7)

夕日に染まる一本マングローブ

撮影地:
沖縄県
石垣島
名蔵湾

 石垣島を初めて訪れたのは、昭和53 年、慶応大学の神経内科医局員になり、厚生省の派遣事業の一貫として離島医療への貢献を目的として、3 か月間赴任した時である。以後、医師として3 か月の出張を数回し、その後も観光で石垣島を訪れ、特に景勝地として名高い川平湾では、その美しいエメラルドグリーンの海に感激させられてきた。私が尊敬する三好和義先生の写真集の作品で、石垣島南西部に位置する名蔵湾に南国特有のマングローブが群生し、海岸沿いに一本のマングローブがぽつりと立っていることを知った。今日は新月で、夜半に天の川が天上にかかり、一本マングローブと天の川が垂直方向に一体化する写真が撮れるチャンスと思い、夕刻前からこの地に待機した。夕暮れの太陽が西に沈む頃、思いがけず急に西の空が鮮やかな朱色から赤に染まり、海面が夕陽に輝く時が訪れた。その後も地平線は刻々と色が変化し、マジックアワーを満喫できた。目的とした天の川は夜半からの天候の変化で空に雲がかかってしまったので、次回とすることとし、今回は美しい夕刻の海面と一本マングローブのシルエットに酔いしれたひとときを伝えたいと思った。

写真とエッセイ  北川 泰久

<所属>
東海大学名誉教授・東海大学付属八王子病院顧問
医療法人 泰仁会 理事長

<プロフィル>
昭和49年慶應義塾大学医学部を卒業し、後藤文男教授の神経内科教室に入局、米国べーラー大学留学後、川崎市立川崎病院に勤務、膠原病と脳卒中の研究を行い、平成4年より東海大学に赴任、東海大学大磯病院副院長を歴任し、平成15年より東海大学神経内科教授、平成17年より付属八王子病院病院長を9年間つとめ平成29年より東海大学名誉教授、付属八王子病院顧問、医療法人泰仁会理事長、現在に至る。

専門は脳卒中、頭痛、生活習慣病、認知症。日本医師会学術企画委員会副委員長をつとめ、日本医師会雑誌の編集に長年携わっている。写真歴は約15年、各季節の旬を盛り込んだ風景写真のカレンダーを11年間作成し続け、平成26年には春夏秋冬の風景写真130余りを盛り込んだ写真集、憧憬を発表。

今まで使用してきたカメラはペンタックスとニコン、現在はニコン850Dを主に使用している。