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2007年1月号(第53巻1号)
平成18年9月23日午後1時から8時間半にわたり、静岡県掛川市つま恋において、吉田拓郎とかぐや姫の31年ぶりのライブコンサートが行われた。参加した35,000人の多くは団塊の世代と呼ばれる50代後半の大人であり、通常のコンサートとは違った一種異様な雰囲気の空間が作られた。
私はと言えば雑事に追われ、気懸りなライブであったが当日は空間ばかりか時間さえも共有することができず、最近購入し使用方法もよくわかっていないDVDレコーダに録画セットするのがやっとであった。
数週間の後に、ようやく録画を見ることができ、何十年かぶりの感覚でコンサートの中に浸りきっている自分がいた。数曲が過ぎ、気が付けば自分を含めて画面の中の参加者の多くは、お腹が出っ張り頭髪は薄くなり、数十年前の若者のかっこよさとは無縁の別世界の絵が写っている。まさに、31年の時空を越えたおじさん・おばさん達の同窓会である。
この人たちは、戦後日本の経済成長とともに人生を重ねており、バブル期やその崩壊を経て、今は平成不況と行財政改革の渦中にいる。その間は、科学の発達が人々の生活に最も影響を与えた時代ともいえる。日々の生活を支えるライフライン、交通、情報環境などが次々と整備され、それらのネットワークは数十年前に想像した以上に発展した。一方で、育児放棄、いじめ、暴力、国家的経済破綻など、社会的な影も拡大している。経済至上主義、各種規制の強要、劇場型政治、マスメディア権力、それらによる教育や医療現場への抑圧など、特定の力が一方的に強調される社会的雰囲気を感じるとき、私達が大切にしてきたもう一つの何かを置き去りにしているように思えてならない。
つま恋ライブは数時間が過ぎ、最後の曲が流れる頃には、ビールの空き缶がいくつも横たわって、定年まで残り少なくなったこの頃に、忘れかけていた自分の中の若者を思い起こすひと時となった。・・・ そして今、私は思っています、明日からもこうして生きて行くだろうと・・・