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2024年10月号(第70巻10号)
みなさん、こんにちは。
10 月に入り、今年も残すところ3 か月を切りました。まだまだ暑さが続く毎日ですがお元気にお過ごしでしょうか。今年は秋刀魚の収穫量が多いということで、しばらく味わうことができるのが楽しみです。
さて、先月はイタリアの旅の話をしましたが、フィレンツェからポルトガルのリスボンに移動しました。皆さんはポルトガルと聞くと何をイメージされるでしょうか。大航海時代の16 世紀に、はじめてポルトガル人が日本に漂着し、わが国に訪れた最初のヨーロッパ人であることは記憶にあるのではないかと思います。実は私たちが日常使うパン、てんぷらなどは、ポルトガル語が語源となったものも多くあります。以前よりポルトガルに興味を持っていましたが、訪れたことのある知人はおらず、ポルトガル料理専門店のオーナーから食べ物やワインについては色々と話を聞いていました。リスボンではホテルではなく、暮らすように滞在できるアパートメントを選び、しばし生活を楽しみました。近くには有名なコメルシオ広場があり、広場の目の前にはテージョ川が広がり、涼しい風が吹いてきて夏の暑さを忘れるほど快適でした。ヨーロッパ人が避暑地にポルトガルを訪れるという理由がよくわかります。ポルトガルは石畳の坂が多く、そのためケーブルカーで移動する箇所が多くあります。旅番組で見た印象よりも坂がきつく、健脚であることが何よりも大事ですが、街の中にはアズレージョ(伝統的な青い装飾タイル)で彩られた建物を見ながら歩くと、ヨーロッパの街歩きを満喫できます。今回の旅の目玉のひとつである発見のモニュメントは、大航海時代の誇りを象徴する記念碑で、ヴァスコ・ダ・ガマやフランシスコ・ザビエルを含む偉人18 体が飾られたものになります。雲ひとつない青空の下、この地から世界に旅立った偉人らに思いを馳せました。モニュメントを後にし、今度はなんとパートナーが2度も財布のスリに遭いそうでしたが、親切な西欧人のおかげで無事でした(皆さんもどうぞお気をつけください)。夜は「運命・宿命」を意味する伝統歌謡であるファドを聞き、歌い手とギターラが奏でるサウダーデ(郷愁)を味わいました。
次に、リスボンから北に上り、ポルトガル第二の都市、ポルトへ移動しました。ポルトガルは地方によって様々なワインを生産しており、ポルトはドウロ川周辺のポートワインもありますが、ヴィーニョベルデ(緑のワイン)の生産も盛んです。機会があってこのヴィーニョベルデを生産しているワイナリーを紹介いただき、訪問することができました。家族経営で運営されていることから、生産量は多くないですが、サステナブルな農法を取り入れ環境に配慮し、生産しているとのことでした。案内人より日常的にウサギ肉を食べるという話があり、偶然にもウサギを食べることもできました。ウサギだけではなく、ポルトガルの料理は海産物が多いため、海産物を食べる日本人にとっては馴染みやすいものがたくさんあります。バカリャウ(タラの塩漬けの干物)などが有名ですが、中でもサルディーニャシュ・アサーダジュ(イワシの塩焼き)は絶品でした。シンプルにイワシを炭で焼いただけですが、味付けにはコリアンダーが添えられ、食欲をそそる一品です。ガイドさんから教えていただいたパスティシュ・デ・ナタ(エッグタルト)もいくつか試し、焼きたてのナタにシナモンをたっぷりかけて美味しくいただきました。そろそろ誌面がなくなりますので、続きは次月にしたいと思います。