バックナンバー
Back Number
2025年2月号(第71巻2号)
2009年にメキシコで端を発したブタ由来新型インフルエンザウイルスは、その後は日本でも感染者を増やして流行を起こし、季節性インフルエンザの仲間入りを果たしてしまった。インフルエンザA/H1N1/pdm2009 が、このウイルスに謹呈された名前である。本ウイルスの毒性は強くはなく、死亡率がそれほど高くなかったことは幸いであった。
本文を書いた直後から、何故か我が国ではプリオン病やウシ規制に関する関心は急速に失われ、今やメディアで取り上げられることも皆無に近い。話題になる回数は先のブタインフルエンザ以下になっている。それにしても、あの大騒ぎは何だったのであろうか? 熱すると全体が見えなくなり大騒ぎをし、熱が冷めると何事もなかったかのようにすべてを忘れてしまう。日本人の欠点を象徴している出来事のようにも思える。悲しいことにプリオン病には治療法もなく、その発病は悲劇的な死に直結している。また、安価で行える迅速簡易検出法も開発されていない。問題が山積している中で、現在のわが国のプリオン病に関する無関心は異常ですらある。
これらの騒ぎに対し、福島の原発事故の被害は膨大であっただけに、現在も「原発即時ゼロ」を唱える人たちも少なくない。しかし、さすがに即時ゼロは現実的ではなく、実現不可能である。この所、リスクの高い原発を廃炉にするなどの決定がなされており、順次、原発を少なくする方向に向かっているようで、こうした傾向が続くことを期待している。日本人は得意ではないが、待つことも重要だと思う。