2025年11月号(第71巻11号)

鳥棲む空にて

ヤツガシラ

撮影地:館林市(群馬県)

 ヤツガシラは、本州では非常に珍しい鳥ですが、迷鳥(悪天候などにより本来の生息地ではないところに飛来した鳥)として時折飛来することがあります。この写真は、数年前に館林市のつつじが岡公園に姿を現した際に撮影したものです。
 黒くて細長く、下方に湾曲したくちばしを持ち、頭部には広げると扇状になる冠羽があります。この冠羽が8枚あることから「八頭(ヤツガシラ)」と呼ばれています。その特異な風貌から、バーダーの間では非常に人気の高い鳥です。
 つつじが岡公園は、通常でも来園者の多い観光地ですが、この写真を撮影した時は、多くのバーダーが詰めかけ、一般の来園者にとっては混雑や迷惑となっていたように思います。
 とはいえ、普段は目にすることのない珍鳥や迷鳥が現れると、つい足を運びたくなるのがバーダーの心理というものでしょう。数年前には、相模原の公園に「ウタツグミ」という迷鳥が現れたことがありました。ウタツグミは非常に地味な鳥で、ヤツガシラのような特徴的な姿ではありません。にもかかわらず、駐車場は早朝から他県ナンバーの車で満車となり、名古屋、大阪、さらには長崎ナンバーまで見かけたことを覚えています。
 こうした事例は、野鳥愛好家に限らず、鉄道や航空機などを趣味とする人々にも見られます。近年では、「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンによる線路への立ち入りや暴言など、行き過ぎた行動によるトラブルが報道されています。
 趣味に没頭すること自体は否定されるべきものではありません。お気に入りの対象に情熱を注ぐことは、人生に豊かな時間をもたらしてくれるものです。しかし環境への悪影響や地域住民との摩擦、さらには対象への悪影響につながる可能性があれば、自重すべきです。
 こうした問題を防ぐためには、「想像力の醸成」が重要でしょう。私自身も、自らの行動が周囲や対象に与える影響を想像しながら、冷静に野鳥観察を楽しみたいと思います。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。