2025年8月号(第71巻8号)

鳥棲む空にて

ササゴイ

撮影地:入間市(埼玉県)

 ササゴイがオイカワを捕らえた瞬間です。ササゴイは葉や小枝を疑似餌として使い、魚を巧みに捕らえることで知られる頭脳派の鳥です。薄明薄暮性(はくめいはくぼせい:夜行性や昼行性に対し、夜明けや夕暮れ時に活動的になる生物の性質を指す)の鳥ですが、真夏の入間川では昼間でもその姿を見ることができました。夏になると好物であるオイカワが産卵のために流れの穏やかな浅瀬に集まるため、それを狙って、ササゴイが明るい時間帯から活動するからです。
 ササゴイによるオイカワ狩りは、夏の風物詩として知られ、毎年多くのバーダーが入間川の狩場に集まりました。ところが、数年前の夏、ササゴイは突如として姿を消したのです。
 その年は、大型の台風が相次いで上陸した年でした。台風によって入間川の環境が破壊されたため、ササゴイは狩場を変えてしまったのでしょう。その後も何度か足を運びましたが、翌年も、その次の年も、ササゴイの姿を目にすることはできませんでした。
 昨年の夏、数年ぶりにササゴイの狩場を訪れてみました。残念ながらその姿を見つけることができませんでしたが、狩場の景観は以前の状態を取り戻しているように感じました。また、地元のバーダーによると、ササゴイの狩りを見る機会も増えているとのことでした。
 悠久の歴史の中で、こうやって破壊と再生を繰り返しながら、地球環境の恒常性は保たれてきたのでしょう。今年に入ってからも、世界各地で山火事が頻発し、中国やアメリカでは大規模な洪水が発生するなど、破壊的な災害が相次いでいます。こうしたニュースに触れるたびに、胸が痛み、不安な気持ちにもなります。それでも私たちは地球の持つ回復力を信じるとともに、自分たちがその維持にどう貢献できるのかを、考え続けていかねばならないように思います。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。