2025年6月号(第71巻6号)

鳥棲む空にて

サンコウチョウ

撮影地:八王子市(東京都)

 サンコウチョウの雄です。八王子市の暗い森の中で見つけました。全長15 センチ程度の小さな鳥ですが、雄には長い尾羽があり、それも含めると45 センチほどになります。また顔面部が黒紫色、背中は濃いワインレッド、腹部は白色、そしてアイリング、嘴(口の中も)がコバルトブルーと言うエキセントリックな色彩もこの鳥の魅力の一つです。また、長い尾羽をひらひらさせながら樹々の間を縫うように飛び回る姿はまるで天女のようです。初めて高い梢にいるその姿を捉えた時は、そこだけ無重力空間になったような不思議な感覚を覚えました。
 魅力的な鳥ですが、個人的には引っかかっていることが一つだけあります。それは囀り(さえずり)です。サンコウチョウの囀りは「ツキヒーホシ、ホイホイホイ」と聞きなしますが、これが月・日・星、と聞えることから、三光鳥と呼ばれるようになったそうです。しかし、「ホイホイホイ」はギリギリ聞こえますが、肝心の三光(月・日・星)はかなり苦しい気がするのです。
 囀りの聞きなしが鳥の名前の由来になることは少なくなく、スズメやツバメの名も囀りの聞きなしが由来になっているようです。ただ間違いもゼロではありません。ブッポウソウという鳥は、その囀りが名前の由来と考えられてきましたが、「ブッポウソウ」と鳴くのは実は全く別のコノハズクという鳥だったとのこと。なんと1,000 年もの間、勘違いされてきたそうです。もしやサンコウチョウの名前も何かの間違いではないか?と、わたしは密かに疑っています。
 インターネットで調べるとサンコウチョウの囀りを聞くことができます。特にYouTube では沢山の動画も見ることができます。何回聞いても「ツキヒーホシ」と聞きなすのはかなり苦しい気がするのはわたしだけでしょうか。お時間のある時にお聞きいただき、ご判断いただければと思います。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。