2025年3月号(第71巻3号)

鳥棲む空にて

コミミズク

撮影地:渡良瀬遊水地(栃木県)

 コミミズクです。日本では冬鳥としてシベリアから渡ってきて全国に分布します。この写真を撮影した渡良瀬遊水地は、コミミズクの越冬地として非常に有名です。
 渡良瀬遊水地は栃木県など、四県の県境にまたがった、日本最大の遊水地です。広大なヨシ原を有し、多数の動植物が生息、生育しています。冬になるとヨシなどの枯草が地表を覆い、コミミズクにとっては隠れ家に困らない住みやすい環境なのだと思います。
 様々な生物を育む渡良瀬遊水地の自然環境ですが、その保全のため実は多くの人の手が必要とされているそうです。定期的にヨシ焼きや土の撹乱、さらには外来種の駆除などが行われており、近隣に栄研化学野木事業所がありますが、従業員の皆様も外来種の駆除に参加されているとのことです。皆様の献身と努力に対して、心から敬意を表します。
 さてコミミズクですが、彼らは他のフクロウ類と異なり、まだ明るいうちに餌のネズミを探してふわふわと飛び回ります。わたしたちバーダーも、重いカメラとレンズを担いで追い駆けますが、渡良瀬遊水地は広大です。この写真を撮影した時も、広い河川敷を飛び回るコミミズクに右往左往させられてヘトヘトになりました。
 いよいよ疲れ果てて動けなくなった時のことでした。遠くで弧を描いて戻ってきたコミミズクが、たまたま目の前の止まり木にとまってくれました。その時の写真がこれです。コミミズクを追いかけ続けた体力自慢の仲間たちは、すぐには戻れずシャッターチャンスを逃しました。焦って駆け戻ってくる仲間を横目にみながら、時に立ち止まることの大切さを実感したのでした。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。