2025年2月号(第71巻2号)

鳥棲む空にて

オオワシ

撮影地:北海道

 オオワシです。この時期、北海道の道東ではあちらこちらで目にすることができますが本州では出会うのがなかなか難しい鳥です。東日本ではグルと呼ばれた諏訪湖のオオワシが有名でしたが、わたしは一度も遭遇できませんでした。それでもオオワシを見たがっていたわたしに、亡くなったAさんが「知床に行けばトンビみたいにうじゃうじゃいるらしいぜ」と囁いたのです。その言葉を信じて、遂に知床にまで足を延ばすことになってしまいました。
 トンビほどではありませんでしたが、知床では確かに多くのオオワシを目にすることができました。国道を走っていると街路樹や電信柱の上に何気なく止まっています。見つけるたびに写真を撮りまくりました。何百枚、何千枚撮ったでしょうか。不思議なことにいくら撮っても飽きないのです。それほどまでにわたしはこの鳥に魅了されていたのです。それからは知床に毎年通うようになってしまいました。一番好きな鳥は?と聞かれれば、迷うことなくオオワシと答えるでしょう。
 オオワシは日本最大の鳥で羽を広げると2.5 メートルにもなります。普段は水面にいる魚を捕まえて食べているようですが、時にカモメなども襲うようです。二羽のオオワシが一羽のカモメを追い掛け回しているのを見たことがありますが、あんなに怖い顔をした巨大な鳥に追い掛け回されたら恐怖でしょう。必死に逃げ惑うカモメが憐れでなりませんでした。
 オオワシは絶滅危惧種です。近年では列車事故、感電事故、さらには鉛散弾によって狩猟された動物の死骸を食べたことによる鉛中毒など、人の営みによってさらに数を減らしています。猛禽(もうきん)類医学研究所の獣医師である齊藤慶輔氏らがオオワシを含む、希少猛禽類の保護活動を展開されておられますが、まだまだ課題は少なくないようです。この巨大で魅力あふれる生物が少しでも数を増やしてくれればと願ってやみません。

写真とエッセイ  佐藤 秀樹

<所属>
獣医師 日本毒性病理学会認定病理学専門家
テルモ(株)R&Dテクニカルアドバイザー

<プロフィール>
テルモ湘南センター 元主席研究員
テルモバイオリサーチセンター 元センター長
人口血管、ステント、イメージングデバイスなど、種々の医療機器の研究開発に従事。

写真は20代の初めの頃、当時お世話になっていた国立衛生研究所の室長に薦められて。モチーフは主に風景と鳥。
記憶している最初のカメラは、キャノンEOSシリーズの1号機、EOS650。
現在使っているカメラはNIKONで、購入したのはつい最近のこと。
それまで使っていたカメラとレンズ資産を手放して購入し、現在は望遠レンズ購入を検討している。

撮影のモットーとしては、デジタルカメラで撮影の際は、多少ピントが甘くても、その瞬間を逃さずシャッターを切ることが大事だと思っている。