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US(ユーズ):基礎講座 Q20

Q

ケトン体試験紙の偽陽性・偽陰性を教えてください。また、確認法はどのような方法がありますか。

A

ケトン体試験紙は尿試験紙項目の中でもウロビリノーゲン、ビリルビンと並んで薬剤による影響が多い項目である。

ケトン体検査の判定に影響を及ぼす理由として、

  1. 【1】薬剤の代謝産物による着色尿のため試験紙の判定が困難、
  2. 【2】薬剤が試薬成分と反応して呈色する

といった2つの場合がある。表1にそれら影響を及ぼす薬剤を示した。

【2】の薬剤と反応する場合は第4回のUS基礎講座でも説明したように、

  1. (1)試験紙が強酸性や強アルカリ性に緩衝されていることにより、phの変動で着色する薬剤が影響を与える場合と、
  2. (2)試験紙の反応系に関わる試薬成分と反応して影響を及ぼす場合がある。

(1)の例として代表的なものとしてエパルレスタット(商品名:キネダック)がある。エパルレスタットの尿色は濃黄色〜橙黄色であるが、アルカリ性下では赤褐色になる性質を持つ。至適pHをアルカリ性に保っているケトン体試験紙では、このため赤褐色を呈する1)。このほかにフタレイン色素(赤紫色)やフェニルケトン尿症で排泄されるフェニルピルビン酸(橙黄色)などが試験紙の呈色の観察に影響を及ぼす。

(2)の例として、SH基を持つ薬剤であるカプトプリル、メスナなどが偽陽性を引き起こす。最近,ブシラミン(商品名:リマチルなど)という抗リウマチ剤による偽陽性の例が多く見られる。ブシラミンはその構造にSH基を有し、ニトロプルシドと反応する。ブシラミン尿にケトン体試験紙を浸した直後に濃い赤紫色を呈するが、10〜20秒後には退色していくと報告されており2)、特徴的な呈色を示す。

偽陽性が疑われた場合には確認試験を実施する必要がある。ケトン体の確認試験としてLange法やRothera法あるが、この方法は尿試験紙と測定原理が同じであるので必要な場合は酵素法(定量法)による確認試験を行うとされている3)

ケトン体の確認法にはならないが、偽陽性の確認に簡便なのは煮沸法である。尿を加熱(直火で3分間、または沸騰浴中15分間)し冷却後再検査する。加熱処理によりアセト酢酸はアセトンとCO2に分解、アセトンは揮発し反応は陰性化する4)。陽性化した場合は薬剤等による偽陽性と判断できる。

表1 ケトン体で偽陽性を起こす薬剤 5) 6)

一般名 薬効分類名 備考
* アラセプリル レニン・アンギオテンシン系降圧剤 SH基を含む薬剤

イソニアジド

結核化学療法剤 黄橙色
* エパルレスタット アルドース還元酵素阻害剤 代謝物のアルカリ成分により
* カプトプリル レニン・アンギオテンシン系降圧剤 SH基を含む薬剤

グルタチオン

グルタチオン製剤 SH基を含む薬剤

セフェム系抗生物質

セフェム系抗生物質 アルカリ性領域で発色
* チオプロニン 代謝改善解毒・シスチン尿症治療剤  
* ブシラミン 抗リウマチ剤 SH基を含む薬剤

PSP

腎機能検査用試薬 アルカリ性領域で発色
* メスナ イホスファミド泌尿器系障害発現抑制剤 SH基を含む薬剤
* レボドパ パーキンソン病治療薬  

*:薬剤の添付文書に偽陽性を引き起こすことを記載

引用文献:

  1. 林 昭夫,他:アルドース還元酵素阻害剤(エパルレスタット)の尿中ケトン体検査への干渉とその機序の解明.糖尿病 35:819〜823,1992.
  2. 樋口まり子:抗リウマチ剤とケトン体偽陽性 その2 リマチルに起因する尿ケトン体偽陽性.検査と技術 32:346〜347,2004.
  3. 尿試験紙検討委員会:T.「尿試験紙検査法」JCCLS提案指針.日本臨床検査標準協議会会誌 16:33〜55,2001.
  4. 植田 寛,他:尿ケトン体測定法.Medical Technology 11:873〜877,1983.
  5. 湯浅宗一,他:尿試験紙法における干渉物質.検査と技術 Vol24,No1,49-55,1996.
  6. 長浜大輔,他:簡便な尿の定性検査の確認法.検査と技術 21:856〜859,1993.

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